「公務員の退職手当」と「民間の退職金」は、似ているようで仕組みも受け取り時期も大きく違います。
とくに定年が段階的に65歳へ引き上げられているいま、公務員は“いつ・いくら受け取れるのか”の前提が変わりつつあります。
一方で民間は、会社ごとに制度の有無や計算方法が異なり、平均額だけでは自分の将来像がつかみにくいのが現実です。
本記事では、公務員の法定ルール(計算式・不支給規定・経過措置)と、民間の実態(平均水準・制度の型・注意点)をわかりやすく整理。
さらに「支給が後ろ倒しになるリスクへの備え」「一時金と年金化の上手な組み合わせ」など、今日から使える実務のコツまで具体的に解説します。
読み終えたときには、あなたが取るべき次の一手――見込額の把握、支給タイミングの再設計、税・年金の最適化――が明確になります。
※本コンテンツは「記事制作ポリシー」に基づき、正確かつ信頼性の高い情報提供を心がけております。万が一、内容に誤りや誤解を招く表現がございましたら、お手数ですが「お問い合わせ」よりご一報ください。速やかに確認・修正いたします。
公務員は法に基づく安定した算定ロジックが強みですが、定年延長期は支給時期の後ろ倒しが最大の盲点。
民間は制度差の大きさが最大の不確実性です。だからこそ、平均値に頼らず「自分の制度」を正確に読み解くことが出発点になります。
実務としては、①俸給月額・勤続年数・退職理由(または自社規程)を確認、
②支給タイミングのズレを家計計画に反映、
③退職所得控除と一時金/年金化の組み合わせで税効率を最適化、の三本柱で準備を進めましょう。
準備の早さが、そのまま将来の可処分額と安心につながります。
もし迷ったら、あなたの前提条件(勤続・年齢・想定退職時期)を教えてください。記事のロジックに沿って、すぐに概算シミュレーションまで踏み込みます。
「スグペイ退職」なら、面倒な手続きをプロが代行。最短ルートで失業保険を受給サポートできます。
複雑な申請も任せられるので、不安なく・スピーディーに受給申請したい方におすすめです。 まずは無料診断で受給額をチェック!
公務員の「退職手当」と民間の「退職金」は何が違う?
-
法的根拠の違い
-
公務員:国家公務員は国家公務員退職手当法、地方公務員は各自治体条例に基づき支給(共通ルールが明文化)。
-
民間:法律で一律義務はなく、就業規則・労使協定・企業年金規約等により各社で設計(会社により有無・水準が大きく異なる)。※実態は後述の厚労省調査。
-
-
用語の違い
-
公務員は「退職手当」が正式名称。民間は一般に「退職金」。制度設計と計算根拠が異なるため、混同しないのが大切。
-
-
不支給・返納の規定の明確さ
-
公務員は懲戒免職・一定の非違行為等で全部または一部不支給/返納の明文規定。民間も就業規則で規定されるが、明文化と運用の透明性は職場により差が出やすい。
-
公務員の退職手当の仕組み(計算式・支給要件・減額/不支給)
基本の計算式
-
退職手当 = 基本額(=退職日の俸給月額 × 退職理由別・勤続期間別の支給割合)+ 調整額
俸給月額は地域手当等を除く本体部分が基準。勤続年数の一部は除算(休職・停職・育休の一部等)される場合あり。
支給要件・不支給
-
国家公務員退職手当法に基づき、懲戒免職等、一定の刑罰確定、失職等は不支給/返納。死亡時の受給順位や欠格事由の規定も明確。
参考:計算例の公開
-
人事院資料には具体的な計算例(勤続換算、休職の除算取扱い、定年前早期退職の割増率など)が例示されている。
定年延長(60→65歳段階引上げ)が退職手当に与える影響
2023年(令和5年)4月から、定年を65歳へ段階的に引き上げ(2年ごとに1歳)。それに合わせ、退職手当にも経過措置が導入されています。主なポイントは次の通り。
-
60歳到達後に本人非違なく退職した場合でも、当分の間は「定年退職」扱いで基本額を算定(不利益とならない配慮)。
-
60歳以降の俸給月額は概ね7割水準・役職定年(管理職勤務上限)等の導入に伴い、「ピーク時特例」で退職時点の減額影響を緩和。
-
定年前早期退職の特例(早期割増の考え方・割増率の維持など)も当分の間は経過措置で整理。
実務上の注意
60歳で「一区切りの退職手当が出る」従来像は支給時期が後ろ倒しになります。住宅リフォーム等の大口支出計画は、支給タイミングの再設計が必須です。
民間の退職金の実態(平均額・制度の普及率)
厚生労働省の「就労条件総合調査(令和5年=2023年調査・2024年公表)」では、民間の退職給付の実態が公表されています。
-
退職給付制度がある企業の割合:74.9%(前回より低下)。
-
定年退職者1人あたりの平均退職給付額(制度あり企業の平均)は概ね1,900万円前後という整理が各種まとめで示される。※調査は「勤続20年以上かつ45歳以上の定年退職者」が対象。
参考:同調査は詳細表(学歴・企業規模・勤続年数など)も公開。企業規模が大きいほど水準が高くなる傾向が確認できます。
公務員と民間の比較で見える5つのポイント
-
制度の安定性
-
公務員は法に基づく全国共通の枠組みで算定ロジックが明確。民間は会社ごとに設計が異なるため、転職や制度改定で将来額のブレが出やすい。
-
支給タイミング
-
公務員は定年延長で支給が後ろ倒し。民間は従来どおり定年時一時金・年金等。資金計画上のインパクトは公務員の方が大きい。
-
金額の算定基準
-
公務員は俸給月額×支給割合+調整額でロジックが固定化。民間は退職一時金・確定給付型年金(DB)・確定拠出年金(DC)等の組合せで、勤続・最終賃金・ポイント制など多様。
-
不支給・返納の明文ルール
-
公務員は懲戒免職等なら不支給/返納が法律に明記。民間も規程で定めるが、内容は会社次第。
-
年金払いの有無
-
公務員は2015年の制度改正を契機に、年金払い退職給付(退職後65歳から、繰上げ・繰下げ選択可)という仕組みが設けられた(共済側の制度)。民間も確定給付年金や企業年金で年金払いが一般的にあり、設計は会社ごと。
よくある誤解と注意点
-
「60歳で公務員退職金が必ず出る」→誤解
定年延長期は支給時期が後ろ倒し。退職金前提のライフイベントは再計画を。 -
「定年延長で退職手当総額が減る」→原則、制度上は不利益とならない配慮
俸給7割水準・役職定年の影響はあるが、経過措置・ピーク時特例で算定配慮が設定。個別ケースは勤続・号俸・退職事由で差が出る。 -
「民間はどこも2,000万円前後」→過度の一般化に注意
実額は企業規模・学歴・職種・制度形態で大きく変動。制度あり企業の平均で語られる数字である点を確認。
受け取り前後の実務チェックリスト
A. 公務員(国家・地方)共通の準備
-
自分の「俸給月額」「勤続期間(除算有無)」「退職理由」を確認
人事・総務が示す見込額資料や人事院の計算例の考え方でセルフチェック。 -
定年延長の経過措置の対象確認
60歳以降の退職が「定年退職」で算定されるか、ピーク時特例の適用可否を確認。 -
大口支出の時期再設計
住宅リフォーム・教育費・ローン返済など、「支給後ろ倒し」を織り込む。 -
税の取扱いを確認
退職所得控除の計算・分離課税の考え方を押さえる(原則確定申告不要)。 -
(共済)年金払い退職給付の選択肢
受給開始年齢の繰上げ・繰下げ、有期/終身の比率、一時金選択の可否を確認。
B. 民間勤務者の確認
-
自社制度の有無・型を特定(一時金/DB/DC/併用)
就業規則・規程と最新の制度改定を確認。 -
水準の相場観を把握
厚労省調査(企業規模・学歴・勤続別)で、自分のポジションに近い数値を参照。 -
転職・早期退職時の控除(自己都合・会社都合差)を確認
大企業相場でも自己都合と会社都合で大きな差。
C. 共通の受け取り後
-
一括受取の使途・運用計画を立案(当面資金・予備費・運用原資を区分)。
-
年金化(分割)との併用設計(税効率・公的年金との合算キャッシュフロー)。
-
遺言・受取人・相続動線(退職手当の不支給・返納条項や遺族受取の規定も念頭に)