退職のタイミングでもらえるお金は同じ“いちどきの受け取り”でも、中身と税金の扱いがまったく違います。
会社が退職に伴って支給する「退職一時金」は、手厚い退職所得控除や“1/2課税”で税負担が軽くなる一方、企業年金を短期加入でやめたときの「脱退一時金」は、多くのケースで“一時所得”となり、手取りが変わってきます。さらに、企業年金連合会へ移換して将来“年金として受け取る”選択肢まで。
——目先の資金需要、老後のキャッシュフロー、そして税金。この三つのバランスをどう取るかが、あなたのベストアンサーを決めます。
本記事では、用語の違いから税金の計算、受け取り方別の損得、手続きの流れまでをやさしく整理。
「今、受け取るべきか? 将来に回すべきか?」を迷わず判断できる実践的なフレームワークをご提供します。
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同じ「一時金」でも、退職に基因するかどうかで税区分が分かれ、手取りは大きく変わります。
退職に伴う「退職一時金」は原則“退職所得”で控除が厚く、短期加入などで受け取る「脱退一時金」は“一時所得”になりやすい——まずはここを正確に押さえること。
次に、①自分の制度(DB/DC/連合会)と支給理由、②税区分と控除額、③移換期限や年金化の可否、④近い将来の資金需要、の順でチェックしましょう。
目先の資金が必要なら受け取りを、老後の安定収入を重視するなら移換・年金受取を軸に検討するのが基本方針です。
最後に、申告要否や住民税の取扱い、複数の退職金を同年に受け取る場合の配分など、実務の落とし穴にも注意を。
勤続年数と金額がわかれば概算はすぐに出せます。あなたの条件に合わせて、もっとも手取りが多く、将来設計に合う選択を静かに選び取りましょう。
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「退職一時金」と「脱退一時金」はどう違う?
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退職一時金
退職に伴って会社や制度から支給される一時金の総称。税法上は原則退職所得として扱われ、手厚い「退職所得控除」と“1/2課税”が適用されます。 -
脱退一時金(退職一時金とも呼ばれることあり)
企業年金制度(確定給付企業年金=DB、厚生年金基金など)から短期加入で年金受給権に満たないなどの理由で、年金の代わりに支給される一時金。用語上は「退職一時金」と呼ばれることもありますが、税の取り扱いはケースにより異なる点に注意。
ポイント
「退職したら全部“退職所得”」ではありません。支給の理由が「退職に基因」するかどうかで、退職所得か一時所得かが分かれます。
税金の基本:一時金にかかる課税区分(退職所得/一時所得)
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退職所得(有利な取り扱い)
計算式:
退職所得 =(収入金額 − 退職所得控除)× 1/2
※特定役員の短期勤続など一部は1/2なし。控除は勤続年数20年以下は40万円×年数(最低80万円)、20年超は800万円+70万円×(年数−20)。 -
一時所得(総合課税)
計算式:
一時所得 =(収入 − 支出 − 特別控除50万円)× 1/2
※給与・退職以外の所得が20万円以下なら所得税の確定申告不要(住民税の申告は原則必要)。 -
どちらになる?
原則「退職に基因して支払われる一時金=退職所得」、それ以外は一時所得。確定給付企業年金(DB)からの退職による支給は“みなし退職所得”として扱う旨が整理されています。
企業年金の種類ごとの扱い(DB・DC・企業年金連合会)
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確定給付企業年金(DB/旧・厚生年金基金含む)
退職に伴う一時金は退職所得扱いが基本。短期加入者がもらう脱退一時金は制度・事実関係により退職所得か一時所得かが分かれます。 -
企業型確定拠出年金(DC)
原則60歳まで受け取れませんが、要件を満たすと脱退一時金を請求でき、この脱退一時金は“一時所得”扱いが一般的。 -
企業年金連合会(通算企業年金)
厚生年金基金やDBの脱退一時金相当額を移換して、将来、年金(終身)で受け取る選択肢があります。移換すると途中引出しはできませんが、年金としての受け取りに切り替えられます。
「脱退一時金」を受け取れる主なケース・条件
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DCの脱退一時金(例)
直近の制度改正も踏まえ、代表的な要件(抜粋)は以下。-
DC/iDeCoに加入していないこと
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最後の資格喪失の翌月から6か月以内の請求
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60歳未満 など
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資産額要件や掛金期間要件(例:掛金期間5年以内または資産25万円以下等)
※実務上の案内例を引用。詳細は加入制度の規約・最新告知で確認。
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DB/厚生年金基金の短期退職者
年金受給権に満たないと脱退一時金対象。その原資を企業年金連合会へ移換も可能(退職から1年以内など)。
受け取り方で税額がこう変わる:具体例でシミュレーション
例A:DBの「退職一時金」を受け取る
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前提:勤続25年、一時金1,200万円
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退職所得控除=800万円+70万円×(25−20)=800万円+350万円=1,150万円
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課税対象=1,200万円−1,150万円=50万円
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退職所得=50万円×1/2=25万円
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所得税(速算表5%帯の目安)=25万円×5%=12,500円(復興特別所得税等は別途)
→ 控除が厚く、税負担が非常に小さくなるのが特徴。
例B:DCの「脱退一時金」を受け取る(課税は“一時所得”)
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前提:脱退一時金80万円(支出0と仮定)
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一時所得=(80万円 − 0 − 特別控除50万円)×1/2 = 15万円
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所得税の確定申告要否:給与・退職以外の所得が20万円以下なら原則申告不要(住民税は原則申告要)。
重要
同じ「一時金」でも、税区分が違うだけで手取りが大きく変わります。DBの退職一時金は退職所得で有利、DCの脱退一時金は“一時所得”になりやすい、という理解が実務的です。
受け取る?温存する?判断のフレームワーク
ミニ意思決定チャート
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今回の一時金は退職に基因している?
→ YES:まず退職所得の可能性(控除×1/2で有利)。
→ NO/(DCの脱退など):一時所得の可能性(50万円控除×1/2)。 -
短期退職で年金受給権に満たない?
→ その脱退一時金は連合会へ移換して将来年金も選べる(途中引出し不可)。 -
近い将来に大きな資金需要がある?
→ ある:一時金で流動性確保。
→ ない:税制・老後のキャッシュフロー上、**年金受取(または移換)**がトータルで有利になりやすい。
こんな人は「受け取る」選好
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退職所得控除の範囲で非課税にできる見込み(DBの退職一時金など)。
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目先の住宅・教育・債務返済に充当したい。
こんな人は「移換(年金化)」選好
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短期加入で金額が小さく、一時所得課税の旨味が薄い。
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将来の年金キャッシュフローを厚くしたい(連合会へ移換)。
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途中引出し不可でも、長期での年金受給を重視。
手続きの流れとチェックリスト
手順(共通の流れ)
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自分の制度種類を確認(DB/基金か、DCか)。
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支給理由と書類を確認(退職由来か/脱退事由か)。
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税区分を確認(退職所得か/一時所得か)。
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移換の可否を確認(連合会への移換は退職から1年以内が目安)。
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申告要否を確認(脱退一時金は源泉無しが多く、原則確定申告が必要)。
チェックリスト
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勤続年数と退職所得控除を試算したか。
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DCの脱退一時金は“一時所得”前提で概算したか。
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連合会移換期限(退職から1年)を過ぎていないか。
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住民税の申告要否も確認したか(所得税が不要でも住民税は原則申告要)。
よくある落とし穴と対策
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「脱退一時金=退職所得」と誤認
→ DCの脱退一時金は多くが一時所得。課税や申告の想定がズレます。 -
源泉徴収がないのに放置
→ 原則確定申告が必要。申告不要の20万円ルールは所得税のみの緩和で、住民税は別。 -
移換のタイムリミットを失念
→ 連合会への移換は退職から1年以内が目安。逃すと年金化選択が狭まります。 -
複数の退職金を同年に受取り、控除配分が複雑化
→ 退職所得控除の配分・通算は取扱いが難しいことがあるため、支給タイミングの調整を検討。