退職時にもらうお金は同じに見えて、「退職金」と「退職所得」はまったく別物。
前者は受け取る“総額”、後者は税金を計算するための“課税ベース”です。
違いを一度つかめば、控除の仕組みや1/2課税の優遇、役員等5年以下の例外まで迷わず判断できます。
この記事では、まず“一言で”本質を押さえ、次に控除式・勤続年数の数え方・よくある落とし穴を具体例で整理。
読み終えたら、あなたの退職金が「いくら非課税になり、いくらに税金がかかるのか」を自分でスッと計算できるようになります。
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退職金は“もらった額”、退職所得は“税金をかける額”。
この線引きを出発点に、①勤続年数を切り上げで確定→②退職所得控除を算出→③(原則)控除後の金額に1/2を乗じる→④例外(役員等5年以下・短期退職手当等・障害退職)を確認――の順に進めれば、計算は驚くほどシンプルになります。
ポイントは「控除を最大限に活かす」「例外の有無を先に見極める」「申告書の提出有無で源泉・申告フローが変わる」の3つ。
ここまで押さえれば、税額の見通しはクリアです。
最後に、手元の条件(退職金額・勤続年数・役職・申告書の提出状況)をメモにまとめ、控除額と課税対象を一度試算しておきましょう。
将来の手取りと手続きの不安が、今日ここで解消できます。
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用語の定義(退職金/退職所得)
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退職金(退職手当等)
退職したことに起因し、一時金として支払われる金銭や類する利益。これが“材料”。 -
退職所得
「退職金」という材料に控除と(原則)1/2の優遇をかけてできる課税ベース。他の所得と分離課税で計算されます。
ビジュアルイメージ
退職金(総額) → 退職所得控除 →(原則)×1/2 → 退職所得(課税対象)
課税の対象・方式(分離課税・1/2ルール)
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分離課税:退職所得は、給与等と切り離して課税。税率は超過累進だが、他の所得と合算しないのがポイント。
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1/2ルール(原則):
退職所得 =(退職金 − 退職所得控除)× 1/2
ただし役員等で勤続年数5年以下に対応する部分(=特定役員退職手当等)は1/2適用なし。
退職所得控除の計算式と「勤続年数」の数え方
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控除額の公式
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勤続年数 20年以下:40万円 × 勤続年数(最低80万円)
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20年超:800万円 + 70万円 ×(勤続年数 − 20)
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障害退職:上記に100万円上乗せ。
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勤続年数の端数処理
1年未満の端数は切り上げて1年として扱う(例:10年2か月→11年)。
3分でできる!計算手順(ステップ・バイ・ステップ)
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勤続年数を年単位に換算(端数は切り上げ)。
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上記公式から退職所得控除額を計算。
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特定役員退職手当等や短期退職手当等に該当する部分がないか確認。
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退職所得(課税対象)を算出
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原則:(退職金 − 控除)× 1/2
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役員等5年以下に対応する部分は1/2なし。
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課税退職所得金額は1,000円未満切り捨て(源泉計算上の取扱い)。
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源泉徴収・確定申告の要否を確認(※申告書未提出だと一律20.42%源泉)。
ケース別の注意点
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役員等×勤続5年以下(特定役員退職手当等)
控除後に1/2の優遇なし。一般部分と按分計算が必要な場合も。 -
短期退職手当等(役員等以外で勤続5年以下に対応)
区分や定義の確認が重要(特定役員とは異なる概念)。 -
障害退職
控除額に100万円加算できる特例。 -
「退職所得の受給に関する申告書」を未提出
支払時に20.42%で源泉。後で確定申告すれば精算・還付の可能性あり。 -
退職金=非課税?
退職所得控除が退職金を上回れば課税なし(退職所得が0)。
具体例でサクッと理解
例① 一般的なケース(1/2ルール適用)
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条件:退職金2,000万円/勤続30年/一般社員
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控除:800万円 + 70万円×(30−20)=1,500万円
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退職所得(課税対象):(2,000−1,500)×1/2=250万円
※この250万円が分離課税のベース。
例② 役員等・勤続5年以下(1/2なし)
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条件:役員勤続5年/退職金1,000万円(全額が役員勤続5年に対応)
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控除:40万円×5年=200万円
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退職所得(課税対象):1,000−200=800万円(1/2なし)
※一般部分と混在する場合は按分のうえ合算。
よくある勘違いQ&A
Q. 退職金そのものに税率がかかる?
A. いいえ。退職所得(控除後、原則1/2後)に対して課税します。
Q. 勤続年数に“月”があるときは?
A. 切り上げて1年として計算します(例:10年2か月→11年)。
Q. 申告書を提出し忘れたら?
A. 20.42%で源泉。確定申告で精算すれば還付の可能性があります。
Q. いつ申告が必要?
A. 原則、申告書を提出していれば不要。提出していない、複数箇所から受給、過去分との勤続期間重複などは取扱いに注意。
チェックリスト
違いはココだけ押さえる!
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退職金=受け取る総額、退職所得=課税の元。
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退職所得=(退職金−控除)×1/2(※役員等5年以下は1/2なし)。
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控除式:40万×年数(最低80万)/20年超は800万+70万×超過年数。
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勤続端数は切り上げ。障害退職は+100万。
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申告書未提出は20.42%源泉→確定申告で精算。
最終チェックリスト
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勤続年数(端数切り上げ)を確認した
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控除額(標準/障害+100万円)を計算した
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役員等5年以下・短期退職手当等の該当有無を確認した
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申告書の提出状況を確認した(未提出なら確定申告検討)
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源泉徴収票・受給に関する申告書の控えを保管した(還付や照合で重要)