退職金は「法律で必ず出るお金」と誤解されがちですが、実は会社が制度を設けたときにだけ支給される性格のもの。
だからこそ、就業規則や退職金規程(以下まとめて「就業規則等」)を正しく読むことが“もらえる/もらえない”を分けます。
本記事では、支給の前提条件・不支給/減額の典型事由・金額の決まり方・税金までを、就業規則等の“読み方手順”とともにやさしく解説します。
※本コンテンツは「記事制作ポリシー」に基づき、正確かつ信頼性の高い情報提供を心がけております。万が一、内容に誤りや誤解を招く表現がございましたら、お手数ですが「お問い合わせ」よりご一報ください。速やかに確認・修正いたします。
-
退職金は制度を設けた会社だけが支給。就業規則等が唯一のルールブック。
-
最低勤続年数・退職事由・計算基礎・不支給/減額事由の4点を必ず読む。
-
税は退職所得控除+1/2課税(ただし勤続5年以下の役員等は除く)。
「スグペイ退職」なら、面倒な手続きをプロが代行。最短ルートで失業保険を受給サポートできます。
複雑な申請も任せられるので、不安なく・スピーディーに受給申請したい方におすすめです。 まずは無料診断で受給額をチェック!
退職金は法律で必須?──「ある会社」と「ない会社」の違い
退職金の制度そのものは、法律で義務付けられていません。
会社が制度を設けた場合に、その決定・計算・支払方法などを就業規則等に書く義務が生じます。
常時10人以上の労働者がいる事業場は、就業規則の作成・届出が必須。その中に退職金規定を置くなら、必要事項を記載します(厚労省「モデル就業規則」)。
どこを読めばいい?──就業規則・退職金規程の探し方
-
就業規則(本体):総則/賃金/退職の章に、退職金の条文や参照条文が置かれがち。
-
退職金規程:別冊・別規程になっていることが多く、適用範囲・支給条件・計算方法・支払時期・不支給/減額がまとまっています(厚労省モデル条文例参照)。
-
労働協約・雇用契約書:労使協定や契約で上書きされることもあるためセットで確認。
-
社内ポータル/人事部:就業規則の閲覧は労働者の権利。見られない場合は人事に請求しましょう。
支給の前提条件(最低勤続年数・雇用区分・退職事由)
就業規則等で、以下が必ずどこかに書かれています。
-
対象者の範囲:正社員のみ/限定正社員/契約社員・パートの扱い 等。
-
最低勤続年数:例)「勤続3年以上に支給」「3年未満は不支給」など。モデル就業規則の例でも“勤続○年以上”の要件例が示されます。
-
退職の種類:自己都合、会社都合(整理解雇等)、定年、死亡、懲戒解雇、障害退職などで支給率が変わるのが一般的。
不支給・減額の典型パターンと合法性の考え方
-
懲戒解雇:就業規則に「全部または一部不支給」と明記されていれば運用されやすい。条文根拠や判断手順の明記が望まれます(モデル就業規則の注記)。
-
短期勤続:最低勤続未満で不支給。
-
重大な損害・背任:就業規則等に不支給・減額事由が規定されていることが前提。定めが無い不支給・減額は原則認められにくいことに留意。
実務ポイント
-
不支給・減額は「具体的事由の明文化」が必須条件。
-
条文が曖昧なままの運用は、後日の紛争リスクが高い。
金額はどう決まる?──代表的な計算ロジック
会社ごとに方式は異なりますが、代表例は次の2系統。
A. 退職一時金(テーブル乗率方式)
-
「退職時基本給 × 勤続年数に応じた支給率」のような表を用いる。厚労省モデルでは勤続年数ごとの支給率表のサンプルが示されます。
B. ポイント/定額加算方式
-
勤続年、等級、評価ポイントを積み上げて最終ポイント×単価で算出 —— 多くの企業が採用。参考的解説多数。
補足:企業年金(確定給付DB・確定拠出DC)と組み合わせる場合は、退職一時金と通算・按分のルールが規程に書かれます。まず通算対象とならない再雇用期間の扱いに注意。
税金のルール(退職所得控除・1/2課税・役員の特例)
-
退職金は「退職所得」。原則、
(支給額 − 退職所得控除額)× 1/2 = 退職所得。源泉徴収されます。 -
特定役員退職手当等(勤続5年以下の役員など)は1/2課税の適用なし(控除後の全額が退職所得)。
-
住民税・復興特別所得税も源泉で調整されます。概算確認は計算ツールが便利(制度要旨の整理に有用)。
トラブルを避ける!就業規則等の読み方7ステップ
手順通りに読めば、誤読や見落としが激減します。
-
適用範囲:自分の雇用区分(正社員・限定正社員・契約・パート等)が対象か。
-
最低勤続年数:何年以上で支給?例外は?(死亡・障害等)
-
退職事由別の支給率:自己都合/会社都合/定年/懲戒で倍率が違うか。
-
計算基礎:基本給か等級給か、ポイントか、計算日は退職日か。
-
通算ルール:休職・出向・パート期間・再雇用の扱い。継続雇用後は支給なしとする例に注意。
-
不支給・減額事由:懲戒や重大過失、秘密保持違反、競業違反などの条文の具体性を確認。
-
支払時期・方法:退職後いつ入金か、分割/一時金、源泉票の交付タイミング。
ケース別チェックリスト
自己都合退職
-
最低勤続年数クリア?
-
自己都合でも支給率テーブルに基づき算出されるか(多くは会社都合より低率)。
会社都合退職(整理解雇・経営悪化等)
-
規程に会社都合の優遇率があるか(自己都合より高率の表があることが多い)。
懲戒解雇
-
就業規則に全部/一部不支給の明記があるか。根拠条文の特定が鍵。
定年→再雇用(継続雇用制度)
-
定年時に退職金を支給し、その後の再雇用分は支給しない例が典型。再雇用の通算有無を要確認。
契約社員・パート
-
適用範囲に含むかがすべて。含めば計算式に乗る。含まなければ支給なし。
障害退職・死亡退職
-
例外的に有利な支給率や最低勤続の免除があるケースあり。条文を必ず確認。
よくある質問(Q&A)
Q1. 就業規則に退職金の規定が見当たりません。
A. 制度自体がない可能性があります。制度があるのに未掲載・未開示は不備の恐れ。人事に閲覧請求を。
Q2. 会社が「今回は出さない」と言っています。
A. 不支給・減額は「就業規則等に具体的事由が明記されていること」が前提。条文の有無と該当性を確認。
Q3. 役員の退職金は税の扱いが違う?
A. 勤続5年以下の役員等は1/2課税が使えず、控除後の全額が退職所得。
Q4. いくら税金が引かれる?
A. 原則は退職所得控除後の1/2課税。概算は計算サイトで試算可能。