退職金の受け取り方ひとつで、手取りは数十万円〜数百万円単位で変わります。
ポイントは「一時金」か「年金」か、そして退職所得控除と“1/2課税”をどう効かせるか。
さらに、会社へ提出する「退職所得の受給に関する申告書」の有無、役員在任の有無(5年以下は1/2適用なし)、複数制度(確定給付・企業型DC・iDeCo・複数社)の受取時期のぶつかりまで、設計次第で負担は大きく変わります。
本記事は、初めてでも迷わないように計算の型・ケース別シミュレーション・落とし穴と回避策を一気通貫で解説。読み終える頃には、「自分にとっての最適な受け取り方」が、数字で腹落ちしているはずです。
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職金にかかる税金の超基本
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退職金(一時金)で受け取ると「退職所得」として分離課税。
計算は原則
(退職金 − 退職所得控除)× 1/2 = 課税退職所得金額。
※一部の“役員5年以下”は1/2が使えません(後述)。 -
退職時に会社へ「退職所得の受給に関する申告書」を出すのが超重要。未提出だと一律20.42%で源泉徴収→自分で確定申告して清算が必要。
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年金形式(企業年金・退職年金など)で受けると「公的年金等の雑所得」。公的年金等控除を引いてから課税。条件次第で申告不要制度あり。
受け取り方で何が変わる?(一時金・年金・併用)
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一時金だけ:退職所得控除+“1/2”が効きやすく、税負担は軽めになりやすい。
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年金だけ:毎年の雑所得として累進税率&公的年金等控除。所得状況によっては非課税・軽課も狙える一方、住民税や国保の影響は年ごとに出やすい。
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併用:一時金に退職所得控除、年金に公的年金等控除。合計負担を抑えやすい王道パターン(制度・規約上できない会社もあり)。
まず押さえる「退職所得控除」と計算式
退職所得控除
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勤続20年以下:40万円 × 勤続年数(最低80万円)
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勤続20年超:800万円 + 70万円 ×(勤続年数 − 20)
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勤続年数は1年未満切上げ。障害者退職は+100万円上乗せ。
退職所得の計算式(原則)
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(退職金 − 退職所得控除)× 1/2
※特定役員退職手当等(役員等勤続年数5年以下の部分)は1/2なし。
シミュレーション:ケース別に手取り額を比較
(所得税は速算表、復興特別所得税は所得税×2.1%、住民税は原則一律10%で概算。端数処理は実務に合わせ切捨て等あり。)
計算の枠組みは国税庁・自治体の公開情報に基づきます。
ケースA:勤続20年・退職金1,000万円(申告書提出・一般社員)
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控除:40万×20=800万円
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課税退職所得: (1,000−800)×1/2= 100万円
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所得税:100万円×5%= 50,000円 → 復興税込み 51,050円
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住民税:100万円×10%= 100,000円
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手取り:1,000万円 − 151,050円 = 9,848,950円(概算)
ケースB:勤続30年・退職金3,000万円(申告書提出・一般社員)
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控除:800万 + 70万×10= 1,500万円
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課税退職所得: (3,000−1,500)×1/2= 750万円
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所得税(23%−控除636,000):7,500,000×0.23−636,000= 1,089,000円
復興税込み:1,111,869円 -
住民税:750万円×10%= 750,000円
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手取り:3,000万円 − 1,861,869円 = 2,813万1,31円(概算)
ケースC:勤続30年・退職金2,000万円(役員期間5年以下の部分=1/2なし)
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控除:1,500万円(同上)
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課税退職所得: 2,000−1,500=500万円(1/2なし)
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所得税(20%−控除427,500):5,000,000×0.20−427,500= 572,500円
復興税込み:584,522円 -
住民税:500万円×10%= 500,000円
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手取り:2,000万円 − 1,084,522円 = 1,891万5,478円(概算)
→ “1/2”が使えないだけで税負担が一気に増えるのがポイント。
ケースD:年金形式(例:60〜64歳で企業年金を年100万円・他所得なし)
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公的年金等控除(65歳未満・一定の年金額なら)例:60万円
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年金の雑所得:100万 − 60万 = 40万円
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所得税はさらに基礎控除等を差し引き判定。条件次第で所得税0の可能性。
※源泉・申告不要制度の判定あり(公的年金等400万円以下、他所得20万円以下など)。
参考例(官公庁の試算例)
勤続38年・退職金2,500万円 → 課税退職所得220万円、所得税約12.5万円、住民税22万円 など。
「控除+1/2」で実効負担がかなり下がる典型パターンです。
よくある落とし穴
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「退職所得の受給に関する申告書」を出し忘れ
→ 会社は20.42%で源泉。確定申告で還付できるケース多数。絶対に退職前に提出。 -
複数の退職金(企業型DC・確定給付・複数社)
→ 退職所得控除は重複期間の調整あり。同一年や前一定期間内に他の退職金があると控除が減ることがある。今後の税制改正動向(“5年→10年”案)にも注意。制度の突合は必ず事前確認。 -
役員等の“5年以下”ルール
→ 役員勤続年数が5年以下の部分は1/2適用なし。端数は切上げなので「4年11か月」は5年扱いに。 -
“年金形式”にしたら社会保険・住民税が年々発生
→ 一時金は社会保険料の対象外だが、年金形式は毎年の所得として各種負担に影響。併用でバランス取りを。
住民税・社会保険はどうなる?
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住民税(退職所得)は分離課税・一律10%(県4%+市6%)が基本。課税退職所得金額×10%で概算可能。徴収は退職時に特別徴収(天引き)されます。
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社会保険:退職金(一時金)は保険料対象外。一方、年金形式は雑所得として住民税や国保・介護保険料等へ年次影響。受給予定額と保険料・減額制度も合わせて確認を。
実践チェックリスト
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退職前に申告書(退職所得の受給に関する申告書)を必ず提出。
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勤続年数の端数は切上げ。控除額を正確に。
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複数制度(確定給付・企業型DC・iDeCo・複数社)の受取時期を分散できるか検討(控除の重複調整を回避・軽減)。
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役員在職の有無・期間を確認(5年以下の部分は1/2なし)。
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併用受取(一時金+年金)で退職所得控除×公的年金等控除の“二刀流”。
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年金形式を選ぶなら、公的年金等控除や申告不要制度の閾値も合わせて設計。
手順:会社・税務でやること
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退職3〜6か月前
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会社の退職金規程・受取方法(一時金/年金/併用)を確認。企業年金(確定給付・企業型DC)の規約もチェック。
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退職1〜2か月前
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勤続年数(端数含む)と見込退職金で退職所得控除を試算。複数制度の受取時期を並べて控除の重複調整が起きないか検証。
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退職手続き時
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会社へ**「退職所得の受給に関する申告書」**提出(必須)。源泉徴収の特例が働き、正しい税額で天引きされる。
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退職後(翌年2〜3月)
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申告書未提出だった場合や複数の退職金・年金形式で調整したい場合は確定申告で清算・還付。
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