退職金の支払いが遅い原因と担当部署への問い合わせ手順

退職金が「いつまで経っても振り込まれない」。そんな不安と苛立ちを抱えたまま待ち続けるのは、精神的にも金銭計画的にも大きな負担です。
実は、退職金の支払時期は会社の就業規則や退職金規程に明記されており、社内の決裁フローや必要書類の不足、さらに中退共・企業年金・企業型DCといった外部制度の処理待ちが遅延の主因になりがち。
だからこそ「どこで詰まっているのか」を特定し、適切な窓口に、適切な言葉で確認することが最短ルートになります。
本記事では、遅延の典型パターンを整理し、担当部署への問い合わせ手順を“そのまま使えるテンプレ文”つきで解説。
最終賃金の支払いルール（請求から7日以内）などの基本も押さえつつ、外部機関の照会先まで一気通貫でガイドします。
「ただ待つ人」から「正しく動いて受け取る人」へ――今日から態勢を立て直しましょう。

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まず押さえる基礎知識：退職金の「支払時期」は就業規則で決まる

• 退職金は、会社が制度を設けた場合、「適用範囲・額の計算方法・支払い方法・支払時期」を就業規則や退職金規程に明記する義務があります。したがって、いつ支払われるかの一次ルールは自社の規程が出発点です。

• 退職金は、就業規則や労働協約で支給条件が明確なら賃金（労基法11条）の性質を持つと整理されます。賃金性が認められると、過度な不支給・大幅減額には厳格な制約があります。

• 退職時に請求があった賃金（最終給与など）は7日以内の支払いが法定（労基法23条）。ただし退職金そのものの支払期日は自社規程の定めが優先という運用が一般的です。

ポイント
まず自社の「就業規則・退職金規程・退職合意書」を確認。そこに書かれた支払時期（例：退職日の翌月末・2か月以内・手続完了後◯週間など）に照らして遅延かどうかを判断します。

よくある遅延の原因（社内・社外）

社内起因

• 確定額の計算待ち（勤続年数・評価反映・控除確認）

• 決裁フローの遅延（稟議・役員決裁が月1回など）

• 必要書類の不足（退職金請求書、振込口座、源泉徴収関係の届出）

• 給与と退職金の支払日が別（規程上、退職金は「退職後◯か月以内」など）

社外起因（外部制度・受取口座側）

• 中小企業退職金共済（中退共）の支給処理期間（会社が請求手続きをしてからおおむね4週間が目安）

• 企業年金（DB/厚年基金解散移換・連合会）の照会・移換手続きに時間を要するケース（問い合わせ窓口：企業年金連合会）

• 企業型DC（確定拠出年金）は、受取開始年齢～75歳到達日前日までに請求手続きが必要（制度上の期日管理が必要）

• 銀行側の与信・名義相違による振込エラー再手続き

今日からできる初動チェックリスト

1. 就業規則/退職金規程の「支払時期」条文を確認（社内ポータル or 総務）

2. 退職金の種類を区分（自社一時金／中退共／企業年金DB／企業型DC）。

3. 提出書類の有無（請求書・口座・身分証・マイナンバー関連）と提出日を控える。

4. 会社側の決裁日（毎月◯日など）と実振込サイクルを確認。

5. 外部制度利用時は、制度窓口名と受付完了日・受付番号を控える（例：中退共・企業年金連合会・DC運営管理機関）。

6. 法的根拠の把握（労基法23条＝最終賃金7日以内、退職金は規程期日が基本）。

担当部署への問い合わせ手順（テンプレ文例つき）

どこに聞く？

• 一次窓口：人事労務・総務・給与/報酬担当（会社の退職金一時金）

• 制度窓口：

  • 中退共を利用→会社の総務（事業主経由）＋必要に応じて中退共側の案内に沿って確認。

  • 企業年金（DB/基金）→企業年金担当/福利厚生、移換関連は企業年金連合会にも確認可。

  • 企業型DC→運営管理機関（レコードキーパー）／社内DC担当。

進め方（最短ルート）

1. 社内規程の支払期日と現在日を照合（期日超過＝遅延の根拠）。

2. 手続状況の可視化を依頼（決裁完了/支払予定日/外部機関への請求日）。

3. 必要書類の不足・訂正がないか再確認。

4. 外部制度の処理目安を踏まえた見込み日を具体的に提示してもらう（中退共≈4週間目安など）。

5. **賃金（最終給与等）**の未払いがあれば、請求から7日以内の支払い義務を明示して支払いを求める。

6. 期日超過が続く場合は、上長・人事部門長・監査/コンプラ窓口へエスカレーション。

メール/チャットのテンプレ（コピペ可）

件名：退職金支払時期の確認（社員番号：12345／氏名：山田）
〇〇部 〇〇様
お世話になっております。○月○日付で退職いたしました山田です。
就業規則（退職金規程）の「支払時期（◯か月以内等）」に基づき、下記2点のご確認をお願いいたします。
1）私の退職金の確定状況（計算・決裁の進捗）
2）予定振込日（外部制度利用の有無と、請求手続き日・受付番号）
必要書類の不足・訂正がありましたらご教示ください。最終賃金等で未払い分がある場合は、労基法23条に基づき請求から7日以内の支払い手続きをお願いします。
以上、よろしくお願いいたします。

外部機関への相談・照会の窓口

• 労働基準監督署：最終賃金の未払いなど労基法23条関連の相談。「退職金が賃金性を持つか」「規程違反の遅延」等についてもまずは相談可。

• 企業年金連合会：企業年金（旧厚生年金基金等からの移換年金）の照会。

• 年金一般の相談（公的年金との関係や源泉徴収票など）：ねんきんダイヤル。

• 中退共：会社経由の請求後の処理目安の確認（約4週間目安）。

• 企業型DC：運営管理機関のFAQ等で受給手続き期間・締切（75歳前日まで）を確認。

よくあるQ&A（支払期限・時効・法的根拠など）

Q1. 退職金は必ず◯日以内に支払う決まりがありますか？
A. 法律で一律の日数は定められていません。自社の規程に定める支払時期が原則です。

Q2. 最終給与はいつまでに支払われますか？
A. 労働者が請求した日から7日以内が法定です（労基法23条）。

Q3. 退職金の請求に時効はありますか？
A. 一般に5年が目安です（中退共のFAQでも「退職日から5年」）。未請求のまま長期放置しないでください。

Q4. 会社が「引継ぎ不十分」を理由に不支給・大幅減額と言っています。
A. 退職金に賃金性が認められる場合、不支給や大幅減額には厳格な要件が必要との裁判例の考え方があります。まずは規程と具体事実を確認し、専門家へ相談を。

Q5. 中退共や企業年金、DCは会社と別の窓口ですか？
A. はい。社内手続き＋外部機関の処理が必要で、ここが遅延のボトルネックになりやすいです。