退職金は「もらえるか・いくらか」だけではなく、「いつ・どう受け取るか」で手取りが大きく変わります。
とくに自己都合か会社都合かの違いは、退職金の係数や在籍年数のカウント、雇用保険の受給開始時期、さらに税金の優遇(退職所得控除・短期退職手当等)の効き方にまで影響。
言い換えれば、同じ退職でも“準備の良し悪し”が数十万円単位の差を生むことがあるということです。
本記事では、まず自社の退職金規程をどう読むかを押さえ、自己都合で起こりやすい金額差のポイント、2025年の雇用保険の取り扱い、税金のキモまでを一気に整理。
最後に、後悔しないための実務ステップをチェックリスト化して、今日から具体的に動けるよう支援します。
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退職金は“会社の規程がルールブック”、自己都合か会社都合かは“展開を左右するカード”です。
自己都合でも、(1)就業規則・退職金規程の入手と計算式の把握、(2)退職日の微調整による在籍年数・ボーナス連動の最適化、(3)退職所得控除と短期退職手当等を踏まえた税額シミュレーション、(4)離職理由の整合確保と雇用保険手続き—この4点を順に進めれば、手取りと受給のタイミングを賢くデザインできます。
迷ったら早めに人事・社労士・税理士へ。感情で動かず、ルールと数字で整えてから動く—それが、自己都合退職でも「もらい方」を最大化する最短ルートです。
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退職金は「法律上の義務」ではない
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日本では、退職金制度の有無やルールは会社が任意に定めるもの。法律で必ず払えと決まっているわけではありません。(制度を設けるなら就業規則等に明示が必要)
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制度を設けた会社は、規程どおりの支払いが法的義務になります(就業規則の相対的必要記載事項)。
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制度を設けたときは資金の保全措置(努力義務)も定められています。
自己都合と会社都合のちがい:どこが金額や条件に影響する?
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退職金そのものの支給有無や金額は、各社の退職金規程しだい。一般に「会社都合の方が優遇(係数が高い・減額なし)」という規程が見られますが、一律ではありません。まず自社規程の確認が最優先です。
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離職票の区分(自己都合/会社都合)は、のちの雇用保険(失業給付)に影響します。 日本の人事部
退職金の計算の土台:就業規則・退職金規程を読むコツ
就業規則のどこを見る?
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対象者の範囲(正社員のみ/契約社員も対象 など)
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計算方法(基本給×係数、ポイント制、勤続年数テーブル 等)
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支払時期・方法(退職後○日以内、一時金/年金)
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減額・不支給の事由(自己都合減額、懲戒時の措置 など)
→ これらは就業規則の必須記載(退職手当を定める場合)。不明な点は人事に照会を。
自己都合で退職するときの“よくある差”
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支給係数が低い/在籍年数テーブルが厳しめ
自己都合は会社都合よりも係数が小さい・加算が少ない規程がよくあります。 -
在籍年数の端数取扱い
税法上の勤続年数は「端数切り上げ(1年未満は1年に)」。規程上の年数カウントは会社ルールに従います(ボーダー月の退職は注意)。 -
退職時期の選び方
同じ自己都合でも、退職日を1~2か月ずらすだけで在籍年数区切りや賞与連動分の計算に差が出ることがあります(規程確認が必須)。
失業給付(雇用保険)の取り扱いの差(2025年4月改正対応)
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自己都合の給付制限が短縮:退職日が2025年4月1日以降なら、待期7日+原則1か月の給付制限(従来は2か月)。ただし、過去5年で自己都合離職が3回以上は3か月。また、一定の教育訓練を受ければ給付制限を解除可能。
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会社都合は原則として給付制限がなく、受給開始が早い点が引き続きメリットです(離職理由の正確な記載が重要)。
税金の基礎:退職所得控除と「短期退職手当等」
退職所得控除と計算式
退職所得の金額=(退職金 − 退職所得控除)× 1/2(一般退職の場合)。
控除額は勤続20年以下:40万円×年数(最低80万円)、20年超:800万円+70万円×(年数−20)。勤続年数は端数切り上げ。
例:自己都合で勤続「10年1か月」、退職金600万円
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勤続年数は切り上げで11年 → 控除額 40万円×11=440万円
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課税退職所得=(600万 − 440万)×1/2
=(160万)×1/2 = 80万円(以後、税率表で源泉徴収)
5年以内退職の特例(短期退職手当等)
勤続5年以内での退職金は「短期退職手当等」に区分され、(退職金−控除)が300万円を超えると「×1/2」の優遇が一部使えません(超過分が全額課税計算に入る)。
ポイント:勤続5年をまたぐかどうか、退職金額が控除+300万円を超えるかで、税額が大きく変わることがあります。年またぎ・月ずらしの検討価値あり。
(参考)退職所得課税や関連見直しは毎年の税制改正で更新されます。最新の税制大綱や国税庁資料で都度確認を。
懲戒・不正が絡むケースの扱い
規程に基づく懲戒解雇等では、退職金の減額・不支給を認めた判例が多くあります(横領・重大な違法行為など)。妥当性は規程や事案次第。
後悔しないための実務ステップ
自己都合でも、やり方次第で“手取り”は変えられます。
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就業規則・退職金規程を入手
対象範囲、計算式、自己都合係数、在籍年数の区切り、賞与連動の有無、減額・不支給事由を確認。 -
退職時期の微調整
勤続「年数の区切り」や「短期退職手当等(5年内)」の境目、賞与支給日との関係を試算。 -
概算シミュレーション
【控除式】と【短期退職手当等】の双方で税額見込みを出す(端数は切り上げ)。 -
離職理由の整合性を確保
退職願・退職証明・離職票の記載がブレると、失業給付や紛争の火種に。 -
雇用保険の手続き
自己都合は待期7日+原則1か月の給付制限(2025/4/1以降)。教育訓練で解除も検討。過去5年で自己都合3回以上は3か月。 -
受け取り方の設計
一時金か年金(企業年金等)か、退職一時金と確定拠出年金の一時金を同時期に受けると控除の使い方に注意(重複や保存期間延長など、近年の見直しに留意)。 -
リスク管理
懲戒事由に該当しうる行為がないか最終点検。不用意な持ち出し・情報漏洩は厳禁。
よくある質問(Q&A)
Q1. 自己都合だと必ず退職金が減りますか?
A. 会社の規程しだいです。自己都合の係数が低い規程は多いものの、一律ではありません。まずは規程の該当条文で確認を。
Q2. 自己都合でも「会社都合扱い」にしてもらえますか?
A. 離職票の区分は事実に即して作成されます。勝手な「書き換え」は不可。やむを得ない事情(雇止め・整理解雇など)があれば会社都合となるケースも。
Q3. 退職金の税金は確定申告が必要?
A. 多くは源泉徴収で完結します(退職所得の分離課税)。ただし複数箇所からの退職金・制度の同時受給などは取り扱いに注意。
Q4. 2025年の制度変更で何が一番効きますか?
A. 自己都合の給付制限短縮(2か月→1か月)と、一定の教育訓練で給付制限解除が可能になった点。転職の資金繰り面で効果が大きいです。