退職金の受け取り方ひとつで、手取りが最大130万円も変わるとしたら――あなたはどちらを選びますか?
「一時金で一括」か「年金で分割」か。実は、税金や社会保険料の仕組みを知っているかどうかで、老後の可処分資金に大きな差が生まれます。
本記事では、初心者でも迷わないように一時金と年金のメリット・デメリット、典型的な損益分岐、最適な併用方法までを具体例で解説。
読み終える頃には、あなたのケースで最も手取りが多くなる受け取り戦略がわかります。
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勤続年数が長めの人ほど「一時金」有利になりやすく、条件次第では総手取りが100万~200万円超変わることは十分ありえます。
特に、厚生年金など他の年金と合算される人は税負担が積み上がりやすく、「一時金=非課税・超軽課税」「年金=毎年課税+住民税+社会保険料影響」という構図になりがちです。
根拠は下記の公式解説と実務ガイドに基づきます(本文で出典を都度明記)
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一時金と年金、税金の基本ルール
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一時金で受け取る場合
退職金は「退職所得」。退職所得控除を差し引き、さらに原則2分の1課税(勤続5年以下の一部は特例あり)。多くの人は控除が非常に大きく、税負担がゼロ~ごく小になります。 -
年金で受け取る場合
企業年金・DC(iDeCo/企業型)の年金受け取りは「雑所得(公的年金等)」として総合課税。公的年金等控除を引いた残りが課税され、所得税+住民税(原則10%)が毎年かかります。
さらに厚生年金など他の年金と合算して計算されます。
どれが「公的年金等」なの?
国民年金・厚生年金はもちろん、確定給付企業年金や企業年金基金、企業型DCの年金も「公的年金等」に含まれます(私的な個人年金保険は別扱い)。
「一時金が強い」理由(退職所得控除と1/2課税の威力)
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退職所得控除は勤続年数に比例して大きくなる仕組み。
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20年以下:40万円 × 勤続年数(最低80万円)
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20年超:800万円 + 70万円 ×(勤続年数 − 20)
例)勤続30年 → 控除1,500万円。退職金が1,500万円以内なら課税ゼロ。
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控除後に課税対象が残っても、原則「2分の1課税」で負担が軽い(勤続5年以下の特定役員等などは取扱いが異なる)。
「年金は積み上がる」理由(公的年金等控除・総合課税・住民税)
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年金受取りは総合課税。公的年金等控除を差し引いた残りが雑所得となり、他の所得と合算して累進税率がかかる。
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65歳以上の公的年金等控除は、年金収入330万円未満なら一律110万円。それを超えると収入×75%−27.5万円など段階式に。自治体の住民税計算でも同趣旨の控除表が使われます。
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住民税(原則10%)も毎年かかり、企業年金の年金は支給都度で一律7%台の源泉(復興特別含む)→確定申告で精算という運用が一般的です。
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社会保険料への影響:企業年金の年金は国民健康保険料・介護保険料の算定にも影響するため、「税+保険料」で実質負担が増えやすい点も見落とせません。
いくら違う?──3つのモデル試算(130万円差の現実味)
ことわり:以下は簡易・概算です(人的控除や医療費控除など個別要素は入れていません)。税率・控除水準は公的資料の区分に沿って試算しています。実額は居住地・家族構成・他所得で変動します。
ケースA:勤続30年・退職金1,500万円
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一時金…退職所得控除1,500万円=課税ゼロ → 所得税・住民税とも0円。
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年金(10年)…年額150万円(企業年金)
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65歳以上として公的年金等控除110万円→雑所得40万円
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ここに住民税(約10%)≒ 4万円/年、所得税5%想定で約2万円/年 → 合計約6万円/年
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10年で約60万円の税負担(社会保険料影響は別途)
→ このケースは差約60万円+保険料増。
※ 厚生年金等が別にある人は下のケースBへ。
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ケースB:厚生年金200万円/年 + 企業年金(10年で年150万円)
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合計年金収入350万円
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65歳以上の計算例に倣い、雑所得 ≒ 350万×0.75 − 27.5万 = 約235万円。
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課税所得が増えるため、所得税10%帯が混じり、住民税10%もフルで発生。
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ざっくり税負担 ≒(所得税・住民税合計で)年間20~30万円台
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10年で200~300万円規模
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一方一時金は上のAと同じ前提ならゼロ~軽課税で済む。
→ 差が「130万円前後」になる典型はこの合算型。他の雑所得(配当・不動産)もあればさらに差が拡大。
ケースC:企業年金のみ・年額100万円(15年)
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年金収入100万円のみ(65歳以上)→控除110万円の範囲内で雑所得0円、原則税ゼロ(翌年の住民税も非課税ライン内になりやすい)。
→ このように他の年金収入が少ない/ない人は年金受取りでも税は軽い。
ポイント
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「他の年金(厚生年金等)があるか」で結果が激変します。
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勤続が長く退職所得控除が大きい人ほど、一時金に寄せるほど有利になりやすいです。
併用はできる?最適化のコツ(順番・分割・退職年の調整)
一時金+年金の併用は制度上可能です(DCや企業年金で選択肢あり)。最適化の考え方は以下。
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まず「一時金枠」で控除を使い切る設計
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勤続年数から退職所得控除の上限を算出し、そこまでは一時金で受けると非課税~超軽課税になりやすい。
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年金は「公的年金等控除110万円(65歳以上)」に収まるよう年額を調整
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他の年金(老齢厚生・基礎)がある人は、企業年金の年額を抑える。
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受取開始のタイミング
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退職直後は給与所得ゼロの年をつくれると総合課税の圧力が弱まる。
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世帯の社会保険料も通算で比較
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年金受取りは国保・介護保険料に影響。トータル負担で「一時金有利」がさらに広がることが多い。
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デメリットも直視:一時金・年金それぞれの注意点
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一時金の注意
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受け取り後の資金管理リスク(浪費・運用リスク)。
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同一年中に複数の退職金を受けると控除計算が特殊に。
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年金の注意
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毎年課税+翌年の住民税。企業年金の年金は支給都度7%台の源泉→確定申告で精算。
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他年金・他所得と合算されるため、思ったより税率が上がる。
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5分でできる実務チェックリスト
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勤続年数から退職所得控除を算出(30年なら1,500万円)。
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会社・基金・DCの受取選択肢(一時金/年金/併用)を確認。
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自分の老齢年金見込み額(厚生・基礎)+企業年金の年金額を合算し、公的年金等控除(65歳以上は110万円ベース)に収まるか試算。
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住民税(概ね10%)と社会保険料の影響も加味。
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「一時金で控除を使い切り、年金額は控除内に収める」構成をベースに受取年数・開始時期を調整。
どんな人がどちら向き?
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一時金向き
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勤続年数が長い/退職金が退職所得控除枠内(~やや超える)
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厚生年金など他の年金が十分にある(合算で税率が上がりやすい)
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税・保険料まで含めてトータル最適化したい人
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年金向き
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他の年金収入が少ない/公的年金等控除内に収まる見込み
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資金管理を分割で行いたい
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併用
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「一時金で控除を活かしつつ、控除内に収まる年金額で安全運転」──もっとも再現性の高い最適解です。
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