退職金は「退職理由」よりも「勤続年数」で手取りが大きく変わる――。
この一点を知っているかどうかで、数十万〜数百万円の差が生まれます。自己都合か会社都合かで税の計算式は同じでも、会社規程の支給率や優遇加算、そして何より退職所得控除の“跳ね方”が異なるのが現実。
たとえば勤続年数は1年未満でも切り上げ、20年を超えると控除が一段と拡大します。
だからこそ、退職月の調整・就業規則の確認・必要書類の準備という「3点セット」を押さえるだけで、あなたの手取りはまだ伸ばせる余地があります。
本記事では、自己都合/会社都合の違い、控除の仕組み、具体的シミュレーションまでを丁寧に解説。今日から使えるチェックリストで、損しない退職をデザインしましょう。
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退職金の基本と「法律上の位置づけ」
日本では退職金制度は法律で必須ではありません。ただし、会社が制度を設けた場合は、対象者・支給要件・計算方法・支払い時期などを就業規則(または退職金規程)に明確に記載する義務があります。
規程に基づき労働者が権利として請求できる退職金は「賃金」に該当します(よって一方的な不支給は原則不可)。
まずは自社の「就業規則」「退職金規程」「賃金規程」を確認するのが出発点です。
退職理由の違い(自己都合/会社都合)で何が変わる?
税金の計算式は、自己都合・会社都合で変わりません。 どちらも「退職所得」として同じルールで課税されます。
支給額が変わる可能性はあります。多くの会社規程では、自己都合は支給率が低め/会社都合は高めに設定されることがあり、早期退職優遇の加算金がある会社もあります(あくまで各社規程次第)。
なお退職金の話から少し外れますが、雇用保険(失業給付)の取り扱いは自己都合と会社都合で待期・給付制限が異なります。
失業給付の詳細はハローワーク等の公式情報も併せて確認を。
いちばん効くのは「勤続年数」:税制(退職所得控除)の仕組み
退職金の税は勤続年数に応じた大きな非課税枠=退職所得控除が最重要。計算式は以下です。
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勤続20年以下:40万円 × 勤続年数(最低80万円)
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勤続20年超:800万円 + 70万円 ×(勤続年数 − 20)
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勤続年数の端数は、1年未満でも切上げ(例:10年2か月→11年)
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障害が直接の原因で退職:上記控除額に+100万円を加算
課税の流れはシンプルです。
課税退職所得金額 =(退職金 − 退職所得控除)× 1/2
(特定役員退職手当等など一部は1/2を適用しない例外あり)
ポイント
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勤続年数が1年増えるだけで控除が40〜70万円増えるため、退職時期を数か月ずらして「端数切上げ」を得るだけでも節税効果が大きくなることがあります。
具体例で比較:勤続年数×退職理由別の手取り額シミュレーション
※以下は例示です。実際の支給率・賞与連動の有無・加算金の有無は会社規程により異なります。税額は概算(復興特別所得税含む)。
モデル規程(例)
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退職金=退職時基本給 × 支給率
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自己都合支給率:勤続10年=20か月、15年=30か月、25年=45か月
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会社都合支給率:同条件で+5か月上乗せ(例:10年=25か月)
(※モデルは厚労省の就業規則例「勤続年数に応じて支給率を設定」を参考に構成)
ケースA:勤続11年・基本給30万円・自己都合退職
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支給率(例):20か月 → 退職金 600万円
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勤続年数は端数切上げで11年
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退職所得控除:40万円×11=440万円
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課税退職所得:(600−440)×1/2=80万円
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概算源泉税:約40,840円(5%階層×復興税)
→ 手取り約5,959,000円(住民税は退職時徴収なし・翌年特別徴収/普通徴収移行に留意)
ケースB:勤続11年・基本給30万円・会社都合退職(+5か月優遇)
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支給率(例):25か月 → 退職金 750万円
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退職所得控除:同じく440万円
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課税退職所得:(750−440)×1/2=155万円
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概算源泉税:約79,120円
→ 手取り約7,420,880円
(同じ勤続年数でも、会社都合優遇で手取りが約146万円増)
ケースC:勤続30年・基本給40万円・自己都合退職
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支給率(例):45か月 → 退職金 1,800万円
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退職所得控除:800万円 + 70万円×10=1,500万円
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課税退職所得:(1,800−1,500)×1/2=150万円
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概算源泉税:約76,575円
→ 手取り約17,923,425円(控除が大きく、税負担は小さい)
見えてくること
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退職理由は「規程の支給率」「優遇加算」で差を生む。
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税金の計算式は同一だが、勤続年数が長いほど控除が跳ね上がり、手取りが有利。
会社規程で変わる支給率と減額・不支給の注意点
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規程例では、自己都合の短期勤続は支給なし/支給率が低め、会社都合や定年は高めとする設計が一般的。早期退職優遇を設ける会社もあります。
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懲戒解雇など一定事由のときは、全部または一部不支給とする規程が置かれるのが通例。妥当性は就業規則の明確化と運用の相当性が鍵です。
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規程に定めがあれば退職金は賃金としての性格をもち、恣意的な不支給は許されません
会社都合時に併せて知っておきたい「解雇予告手当」
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会社が解雇する場合は、少なくとも30日前の予告が必要。30日に満たない場合はその不足日数分の平均賃金を現金で支払う(解雇予告手当)義務があります。
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解雇予告手当は退職金ではなく賃金扱い(給与課税)で、退職所得の1/2課税の優遇は使えません。退職金(退職所得)と混同しないよう注意。
よくある疑問Q&A
Q1. 自己都合と会社都合で税金は変わる?
A. 変わりません。 どちらも退職所得の計算式は同じです(控除と1/2課税)。
Q2. 勤続年数の数え方は?端数はどうなる?
A. 1年未満の端数は切上げます。10年2か月は11年として計算。最低でも80万円の控除があります。
Q3. 障害が原因の退職は控除が増える?
A. はい。通常の控除額に+100万円が加算されます。
Q4. 確定拠出年金(DC)や企業年金の一時金は?
A. 受け取り方で課税区分が変わる場合があります(退職所得や雑所得等)。制度と受取形態の違いを確認し、パンフレット・源泉徴収票の「区分」を必ずチェックしましょう。
Q5. 「退職所得の受給に関する申告書」を出し忘れたら?
A. 原則**20.42%**が源泉されます。確定申告で精算できます。