体調が不安定になると、まず心配なのは「収入をどう守るか」。働けない期間が長引きそうなら健康保険の傷病手当金、もう働ける・短期の療養で済みそうなら雇用保険の失業保険(基本手当)——結論はシンプルですが、金額の計算式や受給期間、退職前後の動き方、そして“同時には受け取れない”というルールが判断を難しくします。
本記事では、「金額」「期間」「体調」の3軸で最短ルートを示しつつ、もらい方の順番や切替の手順、よくある落とし穴の回避策まで、実務目線でやさしく整理。
読後には、あなたの今の状態からどちらを先に使うべきか、いつ何を申請するかが迷いなく決められます。
※本コンテンツは「記事制作ポリシー」に基づき、正確かつ信頼性の高い情報提供を心がけております。万が一、内容に誤りや誤解を招く表現がございましたら、お手数ですが「お問い合わせ」よりご一報ください。速やかに確認・修正いたします。
「スグペイ退職」なら、面倒な手続きをプロが代行。最短ルートで失業保険を受給サポートできます。
複雑な申請も任せられるので、不安なく・スピーディーに受給申請したい方におすすめです。 まずは無料診断で受給額をチェック!
2つの「傷病系給付」の正体を整理
健康保険の「傷病手当金」
-
対象:業務外の病気・けがで就労不能、賃金が支払われない(または少ない)とき。
-
金額:標準報酬月額の平均 ÷30 × 2/3(日額)。2025年4月1日以降、一部の最低補正額の扱いに変更あり。
-
期間:支給開始から通算1年6か月(548日)。途中就労で支給しなかった日も“通算”でカウント。
-
退職後:所定要件を満たせば継続給付が可能(1年以上の被保険者期間、退職日に就労なし、当該傷病で労務不能等)。
-
任意継続:任意継続中に新たに発生した傷病は対象外。
雇用保険の「傷病手当」(=失業保険の派生給付)
-
対象:求職申込み後に病気・けがで求職活動ができない状態になった場合、基本手当の代替として支給。
-
金額:基本手当日額と同額(=賃金日額×給付率)。
-
期間:基本手当の残日数の範囲内で支給。
☆ポイント
健康保険の「傷病手当金」と併給は不可。療養中は傷病手当金、治って求職可能になったら基本手当(または雇用保険の傷病手当を経て基本手当)へ。
金額と期間を具体比較
いくらもらえる?(計算式と上限・下限)
-
傷病手当金(健保)
日額 =(支給開始日前12か月の標準報酬月額平均)÷30 × 2/3。賃金が一部出る場合は差額支給。 -
失業保険(基本手当/雇用保険の傷病手当)
日額 =(離職前6か月の賃金合計 ÷180)× 給付率(概ね50〜80%)。年齢区分ごとの上限・下限が毎年8/1に改定。2025年8月1日改定の下限・上限は厚労省リーフ参照。
ミニ試算(目安)
-
月収30万円(標準報酬月額30万円相当)の場合
-
傷病手当金:30万÷30×2/3 ≒ 6,667円/日(月換算≒約20万円)
-
基本手当:賃金日額は30万÷30=1万円。給付率60%なら 6,000円/日(上限未満なら月換算≒約18万円)
→ 長期療養なら傷病手当金の方が日額が高く出やすい構造です(個人差あり)。※実際は各種上限・下限の影響を受けます。
-
何日もらえる?(支給期間・所定給付日数)
-
傷病手当金:通算1年6か月。治療が長引くほど有利
-
基本手当の所定給付日数:離職理由・年齢・被保険者期間で90〜330日等。詳細は厚労省の表が基準
-
受給期間(権利の有効期限):原則離職の翌日から1年(最大で延長+3年=最長4年相当)…病気等で30日以上働けないときは延長可能。
体調別・状況別の最適ルート
チャート(要約)
-
A:当面、就労不能(医師の就労不可) → 傷病手当金を優先。退職後は継続給付の条件を満たせばそのまま受給。失業保険は受給期間延長を申請して温存。
-
B:短期の療養で回復見込み(数週間〜1か月程度) → 基本手当を軸に、療養が長引いたら雇用保険の傷病手当へ切替。
-
C:すでに失業保険を受給中に発病 → 基本手当を一時停止し、雇用保険の傷病手当に切替(支給額は同額、支給日数は残日数内)。
注意:同時受給は不可。状態(働ける/働けない)で選ぶ。
もらい方の順番と切替手順(退職前後の動き方)
退職前〜退職直後:療養が必要(就労不能)
-
在職中に傷病手当金を申請(会社・健保へ)。
-
退職後も続けて受けるなら、継続給付の条件(①被保険者期間1年以上②退職日に出勤なし③当該傷病で継続的に労務不能)を満たす。
-
失業保険は、受給期間延長をハローワークへ申請(30日以上働けない見込み)。
回復して就労可能になったら:失業保険へ
-
医師の就労可を確認 → 求職申込み・受給手続き。
-
待機7日+(自己都合なら)給付制限を経て支給開始。2025年4月以降は原則1か月(例外あり)。
受給中に発病したら:雇用保険の傷病手当へ一時切替
-
ハローワークに傷病手当の申請(医師証明)。
-
基本手当日額と同額が、残日数の範囲で支給。
よくある落とし穴と回避策
-
同時受給はできない:申請を並走させると不支給や返還のリスク。「順番」に使う。
-
退職日に出勤すると継続給付×:退職日の出勤で要件を外す恐れ。スケジュールを会社・医師と調整。
-
任意継続にすると新規の傷病は×:任意継続期間中に発生した傷病は傷病手当金の対象外。
-
延長の申請漏れ:失業保険の受給期間延長は“30日以上働けない”見込みで申請可。最大+3年まで。
-
上限・下限の改定:毎年8/1に基本手当日額の上限・下限が改定。2025年8/1改定の新上限・下限を確認。
一目で分かる比較表
項目 | 傷病手当金(健康保険) | 失業保険の基本手当 | 雇用保険の傷病手当 |
---|---|---|---|
目的 | 療養中の生活補填 | 失業中の生活補填 | 疾病中の一時中断(基本手当の代替) |
受給条件 | 労務不能・賃金支払なし/少ない | 就労可能・求職活動 | 求職申込後に就労不能 |
日額 | 標準報酬日額×2/3 | 賃金日額×50〜80%(上限・下限あり) | 基本手当日額と同額 |
期間 | 通算1年6か月 | 所定給付日数(90〜330日など) | 基本手当の残日数 |
併給 | 不可(順番に) | — | 不可(基本手当と排他) |
退職後 | 条件付きで継続可 | 権利は原則1年、延長最大+3年 | 基本手当の枠内で運用 |
(根拠:協会けんぽ・厚生労働省公開資料)
迷ったらこの優先順位
-
治療が最優先・長引きそう → 傷病手当金で生活を安定(退職後も継続給付を狙う)。失業保険は延長で温存。
-
短期療養 or すぐに働ける → 失業保険(基本手当)を軸。療養が長引いたら雇用保険の傷病手当に切替。
-
同時受給はNG。その時の“働ける/働けない”で使い分ける。