「広報って、頑張っても評価されにくい。」——もしあなたがそう感じているなら、原因はあなたの実力不足ではなく、“見えない価値”のまま放置されている評価設計にあります。
露出件数は増えているのに、上層部の意思決定にはつながらない。売上や採用にどう効いたのかも説明しづらい。
この記事は、そのモヤモヤを出力→成果→インパクトの3層KPIと、メッセージ浸透・SOV(シェア・オブ・ボイス)という実務で使える指標に置き換え、90日で“評価が見える”状態をつくるための具体策をまとめたものです。
国際的な評価原則(Barcelona Principles)を土台に、今日からできる最小セットで「件数報告から、意思決定を動かす広報」へ。数字で語れるようになれば、広報の仕事はもっと楽になります。
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広報が「辛い」と感じる3つの構造問題
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成果が売上に直結しづらい:営業のように“受注○件”と出せない。因果の鎖が長い。
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定義の曖昧さ:露出=成果、認知=好意、という取り違えが起こりやすい。
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評価の分散:メディア、SNS、イベント、社内コミュニケーション…効果が各所に分散し、単一の物差しがない。
解決の軸は「何のために(目的)」「誰にどんな変化を起こすか(成果指標)」「どう証明するか(測定設計)」の三点セットを、業界標準に沿って整えること。
広報評価の最新スタンダード(Barcelona Principles 4.0)
広報・コミュニケーション評価の国際原則はBarcelona Principles。2025年に4.0版へアップデートされ、ステークホルダー理解やチャンネル横断の包括評価を一層強調しています。要点は:
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目標設定は絶対条件(SMART/OKRで定量化)
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出力(露出)だけでなく、成果(態度・行動変容)とインパクトを評価
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定量+定性の両輪、オンライン/オフライン横断、透明性と学習
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AVE(広告換算)は無効という立場を継続
これらはAMEC(国際コミュニケーション評価団体)の公式原則で、実務を支援するIntegrated Evaluation Framework(IEF)も提供されています。
何を測るべき?—出力・成果・インパクトのKPI設計
広報KPIは3層で考えると迷いません。
出力(Output:広報が生み出したもの)
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掲載件数、到達推定、媒体スコア(媒体格、見出し、露出位置、画像有無などの加点方式)
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SNS投稿数、インフルエンサー起用数、取材設定数
出力は量の管理。ただし「量=価値」ではない点に注意。
成果(Outcomes:相手に起きた変化)
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メッセージ浸透率(後述):“伝えたい要素”が記事に何割含まれたか
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態度変容:ポジ・ニュートラル・ネガの有意な変化(単なる感情値の平均でなく“傾向の推移”を見る)
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検索指標:指名検索の増減、ブランド関連クエリ
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行動指標:指名トラフィック、ナーチャリング到達(例:資料DL、ウェビナー登録)
インパクト(Impact:事業や社会への波及)
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採用:応募数/質、内定承諾率の改善
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営業:PR連動施策に起因するMQL/SQLの増(“PR起点タッチを含む商談割合”などアトリビューション設計が要)
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レピュテーション:ブランド想起・好意度・推奨意向(追跡調査)
ここは他部門データとの連携が肝。AMECは“目的→成果→インパクト”の論理連鎖を推奨しています。
メッセージ浸透(Message Pull-Through)の測り方
定義:獲得露出に、事前に定義した“キー・メッセージ”がどれだけ含まれたかを定量化した指標。
手順
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キーメッセージ(3〜5個)を言い換え語彙込みで定義
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記事/投稿ごとに含有(1)/非含有(0)でタグ付け(精度重視なら人手レビュー)
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記事単位・媒体単位・期間単位で浸透率=含有記事数/全記事数を算出
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浸透“質”を見る場合は見出し含有や冒頭300字含有に加点
例:四半期100件中、メッセージAを含む記事が62件 → 浸透率62%。媒体上位10本に限ると80%など、質的濃度も併記。
メッセージ浸透は“量から質”へ評価の軸を移す中核KPIとして、主要ベンダーや業界記事でも基本指標として解説されています。
競合比較の定番:シェア・オブ・ボイス(SOV)の正しい使い方
定義:特定市場の会話・報道における、自社言及の割合。
式:
SOV(%)=自社の言及数市場全体の言及数(自社+競合)×100\text{SOV(\%)}=\frac{\text{自社の言及数}}{\text{市場全体の言及数(自社+競合)}}\times100
使い方のコツ
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母集団を固定(媒体リスト/言及条件/期間を明示)
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量と質を分離:SOV(量)+媒体格・メッセージ浸透(質)で解像度を上げる
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チャネル別に見る:ニュース/SNS/クチコミで分けて傾向を把握
SOVの定義と計算は各社リファレンスで共通しています。
“やってはいけない評価”とその代替案
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広告換算(AVE):同じ露出面積の広告価格に換算する手法は、無効と明確に否定されています。
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理由:広告と報道は信頼性・目的・効果経路が異なる/複合チャネルでの波及を捉えられない。
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代替:前章の出力・成果・インパクト3層+メッセージ浸透+SOVで体系的に評価。
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90日で整える「評価が見える」運用手順
フェーズ1(Day 1–30):目的と測定設計
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事業OKRを確認(例:指名問い合わせ+20%)
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広報の目的をSMART化(例:採用領域の想起改善→月1回の上位媒体露出/採用LP指名流入+15%)
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KPIマップ作成(出力→成果→インパクトの対応表)
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ルール定義:媒体スコア、メッセージ定義、SOVの母集団
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ダッシュボード雛形を作成(後掲の図表参照)
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データ連携先を確定(PRツール、Web解析、MA/CRM、採用ATS)
フェーズ2(Day 31–60):運用と改善
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メッセージ浸透タグ付け運用開始(週次レビュー)
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競合SOVを月次で更新(定義変更は四半期単位でのみ)
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部門横断レビュー:マーケ/人事/営業と“成果・インパクト”の数字突合せ
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小さな実験:媒体ピッチの角度A/B、見出しワードテスト
フェーズ3(Day 61–90):意思決定とストーリーテリング
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四半期レビュー資料:
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成果KPI(浸透率・態度変容)→何が効いたか
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インパクトKPI(指名検索・MQL・応募質)→次の投資配分
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翌四半期の仮説を明文化(どのメッセージ/媒体/アセットに寄せるか)
補足:AMECのIntegrated Evaluation Frameworkを骨格にすると、上記フローが自然に回ります。
ダッシュボード設計例(図表)
KPIマップ(例)
層 | 目的 | KPI | 取得元 |
---|---|---|---|
出力 | 認知獲得 | 掲載件数、媒体スコア、到達推定 | PR管理ツール |
成果 | メッセージを浸透 | 浸透率(%)、見出し含有率、要旨含有数 | クリッピング+手動タグ |
成果 | 態度改善 | ポジ/ネガ推移、論点別センチメント | 分析ツール+手動補正 |
インパクト | 指名獲得 | 指名検索、指名流入、ブランドCVR | GA等 |
インパクト | 商談・採用 | PR起点MQL/応募、質指標 | MA/CRM/ATS |
メッセージ浸透スコア(擬似コード)
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浸透率 = 含有記事数 / 全記事数
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濃度スコア = (見出し含有×2)+(冒頭含有×1.5)+(本文含有×1)
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媒体重み = 媒体格×露出位置×画像有無
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総合 = 濃度スコア × 媒体重み
SOV定義メモ
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媒体集合:トップ100媒体+業界特化20媒体
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クエリ:正式社名/ブランド名の表記ゆれ一覧
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除外:ジョブ投稿、価格表のみ等の非記事
よくある壁
A. 「上層部が“件数”しか見ない」
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処方:四半期の冒頭1枚で**“質”の指標を先に提示**(見出し含有率、上位媒体比率、メッセージ浸透)。“件数は付録”に回す。
B. データがバラバラで集計が負担
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処方:
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必須KPIを6個以内に絞る
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週次は出力中心/月次は成果/四半期はインパクトと棚卸し頻度を分ける
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タグ付けは優先メッセージ3個だけから開始
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C. AVEを求められる
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処方:国際原則で無効である旨を明示し、代替指標(媒体質×メッセージ浸透×SOV×行動指標)で意思決定ができることを示す。
D. 広報の寄与を“売上で”求められる
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処方:アトリビューションの現実解を説明。
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直接CVだけでなく、指名検索/指名流入の増、PR接触を含む商談比率など“寄与の痕跡”を追う。
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実験設計(特定市場での重点投下→周辺KPIの差分検証)で“相関と可能な限りの因果”を示す。
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