「それ、本当に福利厚生費で落として大丈夫?」――懇親会の飲食代、社員旅行、在宅勤務手当、社宅…日々の判断は“なんとなく”で進めるにはリスクが大きすぎます。
ポイントは、対象が一律か(公平性)、金額や内容が常識の範囲か(妥当性)、そして目的と実態を証拠で説明できるか(記録性)の3本柱。
これを満たしていれば、同じ支出でも交際費や給与課税へと“格下げ”されるのを防げます。
本記事では、現場で迷いやすいOK・NGラインを、具体例とチェックリストでスッキリ整理。さらに、社員旅行や食事補助、健診費用、在宅手当、社宅といった主要テーマを、実務に落とし込めるレベルまで噛み砕いて解説します。
読後には、「どこまで経費にできるのか」「どんな書類を残せばよいか」が自信を持って判断できるはず。今日から“もめない福利厚生費運用”を始めましょう。
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福利厚生費の基本(定義・判断視点)
福利厚生費は、会社が「従業員の福利厚生のため」に支出する費用で、通常要する範囲であれば交際費等ではなく福利厚生費として経費にできます(社内行事の飲食、慶弔金、慰安旅行など)。
ただし、得意先等の接待は交際費、特定の人だけに偏ると給与課税や交際費になり得ます。
国税庁は、社内慰安目的の運動会・演芸会・旅行等の通常費用は交際費に含めないと明示しています。
経費OKにするための「3つの鉄則」
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対象の公平性
「従業員(等)をおおむね一律に」受けられる設計に。役員だけ/一部の人だけは原則NG。 -
社会通念上の妥当性(過大でない)
金額・内容が常識的範囲か。過度に豪華・私的色が濃いと給与や交際費に。 -
目的の明確化と記録
「従業員慰安・福利目的」であることを規程・案内・参加簿・領収書で裏づけ。名目と実態が一致しているかが調査の焦点です。
よくあるOK・NG事例早見表
項目 | 結論 | 根拠・ポイント |
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社内懇親会(創立記念・忘年会等)を全従業員対象で実施 | OK(福利厚生費) | 社内行事で従業員に一律供与する通常の飲食は福利厚生費。上限額の法定基準はなし(常識的範囲)。 |
社員旅行(レク旅行)4泊5日以内、参加率50%以上 | OK(給与課税なし→福利厚生費) | 4泊5日以内・参加率50%以上なら原則給与課税しない取扱い。 |
社員旅行で家族同伴分を会社負担 | NG(原則:家族分は給与課税/経費外) | 雇用関係のない家族分は福利厚生費にならず、原則従業員の給与課税。 |
慶弔金(結婚・出産祝、香典等)を一定基準で一律支給 | OK(福利厚生費) | 「一定の基準」に従い従業員等へ支給する金品は福利厚生費。 |
食事補助(社食/弁当等)で従業員負担50%以上かつ会社負担月3,500円以下(税抜) | OK(給与課税なし→福利厚生費) | 2要件を満たせば非課税。現行上限は月3,500円(税抜)。 |
食事代を現金で定額渡し | NGになりやすい(給与) | 現金渡しは給与扱いが原則。実費精算に転換を。 |
インフルエンザ予防接種を全従業員対象・妥当額で会社負担 | OK(福利厚生費・非課税) | 福利目的で社会通念上妥当なら給与課税不要。 |
法定健康診断費用 | OK(福利厚生費・非課税) | 企業の実施義務に基づき福利厚生費で処理。 |
通勤手当(電車・バス) | OK(非課税限度内) | 月15万円を上限に合理的な運賃等まで非課税。 |
在宅勤務手当を定額で渡切り | 原則NG(給与課税) | 実費精算なら非課税可だが、定額渡切りは給与。 |
社宅(従業員向け)で賃貸料相当額の50%以上を徴収 | OK(給与課税なし) | 社宅家賃の従業員負担が相当額の50%以上なら課税なし。 |
社宅(役員向け)で賃貸料相当額を徴収 | OK(給与課税なし) | 役員は「賃貸料相当額」基準。小規模社宅等の細則あり。 |
グレー判定を回避する実務チェックリスト
共通チェック(全部満たすのが理想)
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対象は全従業員(パート・嘱託含む)か?役員のみ/特定者のみは避ける。
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福利厚生規程や社内ルールに目的と支給基準を明記したか?
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金額は社会通念上妥当か?(過度に豪華・私的便宜でないか)
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第三者(取引先等)参加が混在していないか?混在時は交際費区分を検討。
保存すべき書類(例)
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実施案内(目的・対象・実施日)/参加者名簿/領収書・明細
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旅行:旅程表、参加率、負担割合の記録(4泊5日以内・50%以上参加のエビデンス)
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食事補助:従業員負担割合と会社負担月額3,500円(税抜)以内の計算根拠
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在宅勤務:実費精算書(通信・電気等の業務按分根拠、領収書)
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社宅:賃貸料相当額の計算書・従業員負担額の記録
主要トピック別の詳説
懇親会・社内飲食費
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社内の行事で一律供与する通常の飲食は福利厚生費。法定の上限額はありません。
ただし、社外接待や特定者のみの会は交際費/給与扱いにぶれやすいので注意。 -
よくある誤解:「1人5,000円」は社外接待の判定で話題になる数字で、福利厚生費の上限ではない。
社員旅行(レクリエーション・研修)
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レクリエーション旅行は、内容が一般的水準で、4泊5日以内かつ参加率50%以上なら、原則給与課税不要で福利厚生費に。海外も現地滞在が4泊5日以内が目安。
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家族同伴の費用は原則NG(従業員の給与課税となり得る)。同行させるなら家族分は自己負担・社外者は交際費区分を検討。
健康診断・人間ドック・予防接種
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法定健康診断費用は、企業義務に基づき福利厚生費・非課税でOK。
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人間ドックは義務外だが、基準や対象が合理的であれば福利厚生費計上の実務あり。運用前に規程整備と金額妥当性の確認を。
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インフルエンザ予防接種は、全従業員対象かつ社会通念上妥当額なら福利厚生費・非課税扱いが可能。
通勤手当・在宅勤務手当(テレワーク)
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通勤手当(電車・バス等)は合理的な運賃等の額(上限月15万円)まで非課税。マイカー・自転車は距離区分で上限。
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在宅勤務手当は原則給与課税。ただし実費精算(通信・電力・サテライトオフィス等)なら非課税にできる。定額渡切りは課税対象。
社宅・家賃補助
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従業員社宅:従業員から賃貸料相当額の50%以上を徴収すれば給与課税なし。相当額の計算方法は通達ベースで定めあり。
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役員社宅:賃貸料相当額の徴収が必要(小規模社宅か否かで算式あり)。
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住宅手当は原則給与課税になる点と混同注意。
消費税の扱い(仕入税額控除の落とし穴)
福利厚生費のうち飲食・旅行等の購入費は原則課税仕入れ(インボイス要件充足で控除可)。
一方、社宅の家賃は住宅の貸付に該当し非課税のため、家賃等に係る仕入税額控除は不可。維持費等の扱いも通達確認が必要。
個人事業主・役員だけの会社は要注意
従業員がいない(または役員だけ)の場合、福利厚生費の計上余地は限定的。
家族や事業主本人の健診・旅行費用等は経費にならないのが基本です。