「脱退一時金」と「退職金」、名前が似ているせいで同じものだと思っていませんか?
実はこの二つ、もらえる人も、もらえる理由も、手続きも、税金の扱いもまったく別物です。
前者は日本の公的年金を短期間だけ納めて日本を離れる、主に外国籍の方向けの払い戻し。後者は会社や公務からの雇用に基づく退職時の給付。
つまり、“年金の話”と“会社のお金の話”が混ざってしまうと判断を誤りがちです。
本記事では、誰が・いつ・いくら・どうやって受け取れるのかを、初心者にもわかる言葉で整理。
よくある勘違い、税金の落とし穴、申請の締め切り、将来の年金への影響まで、実務で迷わないためのポイントを一気に解決します。
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一覧で比較(誰が・何でもらえる? 税金は? いつ手続き?)
脱退一時金 | 退職金 | |
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根拠 | 公的年金の特例給付 | 企業・公務の退職給付制度 |
主な対象 | 日本国籍以外で、年金加入通算6か月以上、受給資格10年未満で日本を離れる人 | 退職する従業員・公務員 |
もらえる条件 | 被保険者資格喪失+出国後2年以内に請求 | 会社・団体の就業規則・退職金規程に定めあり |
金額の決まり方 | 国民年金:定額式/厚生年金:平均標準報酬×支給率(いずれも上限60か月) | 勤続年数・退職理由・賃金・制度(DB/DC/中退共/一時金)など |
税金 | 厚生年金分は20.42%源泉(後日還付の可能性)/国民年金分は源泉なし | 退職所得控除後の金額の1/2に課税(多くは源泉で完結) |
注意点 | 請求するとその期間は将来の年金資格に算入不可 | 制度が存在しない会社も可。規程があれば規程通りの支払い義務 |
出典の要点:脱退一時金の要件・計算・60か月上限・2年以内請求、課税(20.42%)は日本年金機構と厚労省資料/退職金の任意性と税制は労働局・国税庁。
脱退一時金とは(対象・要件・金額・税金・注意点)
対象・受給要件(主なポイント)
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日本国籍でない
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公的年金の被保険者でない(資格喪失済)
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通算6か月以上加入、老齢年金の受給資格期間(10年)未満
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日本に住所がない
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最後の資格喪失(or 住所喪失)から2年以内に請求
※障害年金の受給権があった場合は対象外。
金額の考え方(簡略)
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国民年金:その年度の保険料×1/2×「月数区分の係数」。上限60か月。
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厚生年金:平均標準報酬額×支給率。支給率は加入月数区分に応じ、上限60か月相当。
税金
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厚生年金の脱退一時金:支給時に20.42%源泉。ただし「退職所得の選択課税」による還付申告で戻る可能性あり(納税管理人の届出が有用)。
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国民年金の脱退一時金:源泉なし。
実務での注意
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請求すると、その対象期間は将来の年金資格期間にカウントされません。将来日本で長く働く見込みがあるなら、安易に請求しない判断も
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社会保障協定がある国は期間通算が可能な場合あり。帰国後に年金資格へ活かせるなら、脱退一時金ではなく通算を検討
退職金とは(制度の種類・支給ルール・税金・注意点)
制度の種類(民間の典型)
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退職一時金制度(会社が規程に基づき一括支給)
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退職年金(企業年金):
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確定給付(DB)…将来の給付水準を会社が約束
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確定拠出(DC)…拠出額のみ確定(企業/個人型iDeCo)
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中退共(中小企業退職金共済) など
※どれを採るかは会社次第。法律で導入義務はありません。
支給ルール
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制度を設けた会社は、就業規則や退職金規程に従って支払う義務。慣行があればトラブル時の根拠になり得ます。
税金(個人側)
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退職所得控除:
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勤続20年以下:40万円×勤続年数(最低80万円)
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20年超:800万円+70万円×(勤続年数−20)
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課税は**(収入−退職所得控除)×1/2**。多くは会社の源泉で完結。役員の一部は1/2の特例なし。
こんな勘違いに注意(Q&A)
Q1. 脱退一時金=会社の退職金のこと?
→ いいえ。公的年金の払い戻しで、会社の退職金とは無関係です。
Q2. 日本人でも脱退一時金はもらえる?
→ 原則日本国籍の人は対象外。
Q3. 会社は退職金を必ず払う?
→ 義務ではありません。ただし制度があれば規程どおり支払う必要あり。
Q4. 厚生年金の脱退一時金の税金は戻せる?
→ 条件次第で還付の可能性(選択課税で申告、納税管理人の届出が便利)。
ケース別:どちらに当てはまる?
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外国籍で、在日通算4年勤務→本国へ帰国(年金通算10年未満)
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→ 脱退一時金の検討。出国後2年以内に請求、厚生年金分は20.42%源泉。
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日本企業を定年退職
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→ 退職金(会社規程 or 企業年金)。税は退職所得控除+1/2。
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公務員の退職手当
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→ 計算式(俸給月額×支給割合+調整額)等が定められます。
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申請・受け取りの手順(図解フロー)
脱退一時金(出国後2年以内・日本年金機構へ)
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条件確認(国籍・加入月数・日本住所の有無・受給資格10年未満)
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被保険者資格を喪失(退職・出国)
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「脱退一時金請求書」を作成(パスポート・基礎年金番号等を添付)
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日本年金機構へ郵送(海外から可)
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厚生年金分の税源泉(20.42%)—必要に応じて還付申告
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事前に納税管理人を日本に指定しておくと手続きがスムーズ。
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退職金(会社・団体の規程に従う)
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就業規則・退職金規程の確認(支給条件・計算式・支払時期)
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退職手続き(必要書類の提出・引継ぎ)
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「退職所得の受給に関する申告書」を会社へ(源泉計算のため)
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受け取り(一時金/年金/併用)
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必要に応じ確定申告(原則不要だが、例外あり)