「休職したら終わり」——その一言に、胸の奥が冷たくなる。けれど実際の現場では、休職は“終わり”ではなく、回復と再出発のための計画された中休みです。
大切なのは、勢いで戻ることでも、無理に耐え続けることでもなく、治療・生活リズム・職場調整・支援制度を順番どおりに整えること。
本記事では、就業規則の読み解き方から傷病手当金の受け取り方、産業医・人事との対話設計、そしてリワークを活用した段階復帰まで、復職を“再現可能”にするロードマップを提示します。
もし今、迷いと不安で足が止まっているなら大丈夫。あなたはもう、戻るための入り口に立っています。ここからは、今日やることが明確になるはずです。
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その「終わり」という言葉は事実か?
「休職したら終わり」「戻れない」――よく耳にする言葉ですが、制度・実務の観点では誤りです。厚生労働省は、休業した労働者の復職支援を事業場の重要課題と位置づけ、具体的な復職支援の手引き(5ステップモデル)を提示しています。企業もこの枠組みに沿って体制整備が求められています。
休職の基礎知識(法律・社内規程・お金)
休職制度は“法律で自動付与されるもの”ではない
休職は労基法に直接の法定制度があるわけではなく、多くは会社の就業規則でルール化されています。
したがって、あなたの会社の就業規則が原則。期間・要件・手続・復職判定・満了時の扱いを確認しましょう。
復職支援は“国の公式手順”がある
メンタル不調で休業した場合、国の手引きは以下の5段階(後述)での支援を推奨しています。
企業は産業医・人事・上司・外部資源が連携して進めるのが基本です。
生活を支えるお金:健康保険の「傷病手当金」
私傷病で働けないとき、健康保険から傷病手当金が支給される可能性があります。主なポイントは次の通り。
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要件:①業務外の病気・けがの療養、②労務不能、③連続する3日間の待期+4日目以降休業、④賃金支給がない(賃金が少ない場合は差額支給)
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期間:支給開始日から通算して1年6か月(2022年1月改正で“通算化”)
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支給額:おおむね標準報酬日額の3分の2相当
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退職後も継続給付の条件を満たせば受給継続可(一定要件あり)
詳細は本文の「5章」で図解します。
復職ロードマップ全体像(6ステージ×12ステップ)
ステージA:診断〜休職開始
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医療受診・診断書取得
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会社へ届け出(就業規則確認・休職発令)
ステージB:療養初期(0〜4週)
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休息と治療計画の確立(主治医)
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連絡ルールの合意(頻度・窓口・話題範囲)
ステージC:回復基盤づくり(1〜3か月)
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生活リズムの安定化(睡眠・活動・記録)
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産業医面談/職場配慮の素案づくり
ステージD:復職準備(2〜4か月)
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リワーク(復職支援)の活用(8〜12週が目安)
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復職可否判定前の試し出社(見学・短時間)
ステージE:復職判定〜段階復帰(3〜5か月)
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三者調整〔主治医・産業医・会社〕→最終判定
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短時間勤務・軽減業務での段階復帰(2〜8週)
ステージF:定着(復職後3〜6か月)
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負荷の段階的増加(業務・時間)
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フォローアップ(面談・セルフケア・再発防止プラン)
ステージ別・実行手順
ステージA:診断〜休職開始(Day 0〜7)
手順
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受診:体調悪化時は早めに心療内科・精神科/各科へ。
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診断書を取得(病名または症状、労務不能期間が明記)。
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就業規則で休職事由・期間・提出書類・復職判定方法を確認。
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会社へ申請:人事窓口に診断書提出。連絡窓口と頻度(例:隔週メール)を合意。
ポイント
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会社独自の様式がある場合あり。指示に従う。
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休職の有無・期間は就業規則が最優先(法の下限を下回れない原則も念頭に)。
ステージB:療養初期(Week 1〜4)
手順
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休息の確保:睡眠・服薬遵守。
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連絡ルール運用:連絡は“短く・事実のみ”。
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傷病手当金の準備:申請書式の入手・会社記入欄の依頼・主治医記入の段取り。
Tips(文例:連絡メール)
件名:休職中の近況報告(氏名・所属・○月○週)
体調は○割程度/通院継続/服薬遵守。次回診察:○/○。次回報告:○/○週。必要書類:傷病手当金申請書 会社記入欄のご対応をお願いできますか。
ステージC:回復基盤づくり(Month 1〜3)
手順
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生活リズム表をつける(起床・活動・疲労・気分)。
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産業医面談:復職条件・配慮案(時短・業務範囲)を素案化。
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外部資源の検討:地域障害者職業センター等。
効果
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生活記録は産業医・主治医・会社への客観資料。復職判定で有効。
ステージD:復職準備(Month 2〜4)
手順
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リワークに申込み(標準8〜12週・無料/公務員は対象外)。
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プログラム:生活リズム、体力・集中力の回復、対人技能、ストレス対処、職場課題の事前練習。
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三者同意で復職プランを作成(勤務時間・業務・配慮・評価方法)。
メモ
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医療機関の「医療リワーク」と職リハ(地域障害者職業センター)は目的が異なる。職リハは適応支援(治療ではない)。
ステージE:復職判定〜段階復帰(Month 3〜5)
手順
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主治医意見書→産業医判定→会社決定の順で最終判定。
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試し出社/職場見学→短時間勤務(例:週3・各2〜4h)→段階増加のロードマップを明文化。
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評価会議(毎2〜4週)で客観指標(欠勤・疲労・集中時間・業務成果)を確認。
ステージF:定着(Month 3〜6 after RTW)
手順
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段階的増分:週次で勤務時間や責任範囲を調整。
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フォロー面談:主治医(月1)、産業医(1〜2か月毎)、上司(週1)。
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再発予防計画:トリガー・早期対処・相談ルートをシート化。
傷病手当金の取り方(要件・金額・期間・落とし穴)
受給要件(4つ)
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業務外の病気・けがで療養中
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労務不能(医師が就労不可と判断)
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待期:連続3日休み+4日目以降の休業日に支給
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賃金の支払いがない(ある場合は差額支給)
※任意継続中の新たな傷病は対象外。
待期の数え方の注意
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3日間は連続が必要。途中で出勤するとリセット。
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年休や公休日も待期に算入可。
期間と改正ポイント
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支給開始日から通算1年6か月(2022/1/1以降)。就労等で未支給の期間は繰り越し可。
金額(目安)
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1日あたり=(支給開始前12か月の平均標準報酬月額 ÷ 30)× 2/3。
退職後の継続給付
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条件を満たせば退職後も受給継続可(例:退職日前日までに被保険者期間通算1年以上、退職日に出勤していない等)。
申請のコツ(チェックリスト)
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会社記入欄の就労実績・賃金の整合
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主治医記入欄の病名・初診日・労務不能期間が明確
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支給対象期間ごとに毎月準備(まとめて申請も可、時期は保険者案内に従う)
リワークを使った“確実に戻る”方法
公的リワーク(地域障害者職業センター)
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標準8〜12週/通所型/無料。本人・主治医・会社の三者同意で計画を作成。生活リズム・体力・対処法・模擬業務・グループワーク等。毎年80%以上が職場復帰(東京センター実績)。※公務員は対象外。
プログラムの中身(例)
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生活リズム記録、疲労・気分モニタリング
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認知行動療法的ワーク、SST、アサーション
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模擬業務(集中・指示理解・持続)
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再発予防プランの作成とリハーサル
医療リワークとの違い
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医療機関のリワークは治療重視(平均3〜7か月)、センターは職場適応支援(約3か月)。両輪で併用も有効。
産業医・人事・上司とのコミュニケーション設計
役割分担(ざっくり)
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主治医:疾病の診断・治療・就労可否の医学的判断
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産業医:就業上の措置(就業制限・配慮)の勧告、職場環境面の助言
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会社(人事・上司):復職可否の最終判断、配慮実施、労務管理
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外部資源:職リハ(実地トレーニング)
情報共有の範囲
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診療内容の詳細は同意の範囲内で共有。医療情報は必要最小限。
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共有するのは「就業配慮に関係する事実」に限定(勤務時間、業務内容、通院配慮など)。
復職判定と「短時間・段階的復帰」の進め方
判定プロセス
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主治医が「復職可能(条件付き含む)」と判断
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産業医が職場要件と突き合わせて判定(面談)
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会社が就業規則・職場状況を踏まえ最終決定
段階復帰テンプレ(例)
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週1〜3日×2〜4h → 週4〜5日×4〜6h → フルタイム、の3段階
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評価指標:遅刻早退0、疲労回復時間、集中持続時間、対人ストレス対処、業務エラー率
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配慮:在宅併用、会議時間短縮、責任範囲の制限、通院配慮
ありがちな失敗と回避策Q&A
Q1:待期3日の数え方を間違えた
A:連続3日で成立。途中出勤でリセット。年休・公休もカウント可。
Q2:退職したら傷病手当金は終わり?
A:一定要件を満たせば退職後も継続給付可。退職日に出勤すると要件を満たさない点に注意。
Q3:会社が「うちは休職制度がない」と言う
A:休職制度は法定ではないが、設けるなら就業規則に記載が必要。自社規程の有無と内容を確認。
Q4:職場の準備が不十分で再発が心配
A:手引きに沿った復職支援プログラムを事前に策定し、産業医・管理職の役割を明確化。
ケース別タイムライン例
メンタル不調(うつ・適応障害)例(約16週)
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W1–2:診断書→休職発令、睡眠是正、申請準備
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W3–4:生活リズム表、短時間の外出練習
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W5–12:職リハリワーク(8週)+産業医面談(月1)
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W13–14:試し出社・見学→短時間勤務(2〜4h)
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W15–16:段階増分→復職判定・合意→フルタイムへ移行
身体疾患(術後)例(約12週)
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W1–2:術後療養、リハビリ計画
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W3–8:体力回復・歩行距離/心拍等の客観指標管理
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W9–10:試し出社→短時間勤務
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W11–12:段階増分→復職判定(産業医)